廃木材のバイオエタノール化は有効?
新聞にE2の文字があったので、「バイオエタノールのガソリンへの3%混合をやめて、2%混合の推進に切り替えたのか?!」と驚いたら、神世界(しんせかい)の霊感商法事件がらみのサロン(有)E2(イー・スクエア)についての記事だった。あービックリした。
先日、廃木材からバイオエタノールを作る工場を見学した。トウモロコシやサトウキビなど「食べられる」ものからのエタノール化に疑問をもつ立場としては、非食用バイオマスはとても興味がある。
非食用バイオマス(セルロース系)の問題は、原料から糖分を取り出すのが難しいため、「前処理」が必要で、その前処理(硫酸を使う方法が一般的)のあと、セルラーゼで糖化し、その後遺伝子組み換えでパワーアップした大腸菌(KO11)もしくは酵母(VTT)を使って発酵させエタノールを作るというとても面倒な手間をかけなければならないこと。そのまま前処理なしにフツウの微生物で発酵させられる食品系に比べ、数段手間がかかるのでその分コスト高になる。
もちろんコストだけでなく、バイオ燃料の価値は化石燃料を減らせることにあるわけだから、バイオ燃料を作るためにその減らせる化石燃料以上のCO2を使うようでは話にならないので、そのあたりも興味のあるところ。
しかし、見学した「バイオエタノール・ジャパン・関西」は国内初の商用プラント。企業秘密と特許の壁に阻まれて、工場の外側しか見せてもらえない上(廃木材の山しか見えない)、説明も「かゆいところに手が届く」というわけにはいかない。結局、採算があうにはまだ何年か先になるだろうということ、おからも使っているということ以外は、特に新しいことはわからなかった。
廃木材のバイオエタノール化は、廃棄物の有効利用という観点からも期待したいが、その将来性は今後どのように前処理を簡略化できるか、どのようなセルラーゼが開発されるか、遺伝子組み替えでない菌で発酵できるようになるか、などによって大きく変わってくる。今後の技術開発に注目していきたい。
ともあれ、省エネにまさるものはない。バイオエタノールを3%混ぜるかどうかより、まず車の使用を控えることが一番カンタンな温暖化ガス削減法であることは確かだ。
◎ 今日の用語:セルラーゼとバイオエタノール
セルラーゼ:セルロースを分解する酵素群の総称。
バイオエタノール:「インフレは温暖化対策?」の頁をご参照ください。
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