文春が武田エコ批判説に反論 公開質問状
今日発売の週刊文春(2009.2.12号)に『環境問題はなぜウソがまかり通のか』の著書である武田邦彦氏への反論が大きく掲載された。
ある意味マスコミの寵児だった氏に対し、これだけのスペースを割いて反論するとはアッパレ…と、文春を見直す思いで読んでみた。
レジ袋に関して以外は、ほぼ納得のいく内容。レジ袋に関しては、あまり専門知識がないと思われる神戸山手大学教授のコメントが採用されていたのは残念だ。
その教授らが平成14年に行った調査によると、「80%の人がレジ袋を台所の生ゴミを入れる袋や、ゴミ箱の内袋に再利用していた」「レジ袋がもらえなくなったら、代わりの袋を購入するという人が60%もいる」とのことで、「調査の時点で、レジ袋を再利用しないで捨てるという人は0.8%しかいませんでした。つまり、レジ袋を有料化しても、多くの人がゴミを捨てるために代わりの袋を買うことになり、ゴミの全体量もさほど減らないでしょう」というコメントを紹介している。
この結論は明らかにおかしい。理由は下記のとおり。
1つはこのコメントの根拠が7年も前の調査であること。その頃は、ごみを有料化している自治体もまだ多くはなかったからごみの指定袋制を導入している自治体も限られていたが、今はごみ有料化が進み、指定袋を採用している自治体は多い。調査時点と今とでは、社会背景が明らかに変わっているのだ。だから、今同じアンケートをとったら違う結果になる可能性は高い。少なくともごみの外袋としてはレジ袋を使えない地域が増えているのだから。
次におかしいのは、この調査は人に対する調査であり、実際のレジ袋量は不明であるにも関わらず、量を推定し、「ゴミの全体量は減らないでしょう」と強引に結論を導き出していること。レジ袋をもらえなくなったら、代わりの袋を購入する人が60%いるというが、60%の人が現在もらっているレジ袋量と同量の袋を購入するとは考えにくい。今までタダだからとムダに使っていた分を引き締めると考える方が普通ではないだろうか。同じアンケート結果から、「ゴミの全体量は少なからず減る」という結論を導くことだって可能だ。
また、同じ平成14年度に杉並区が行った「杉並区中継所搬入ごみ組成調査(平成14年度)」では、ごみ中に含まれるレジ袋の約7割が単なるごみとして捨てられていたというが、そのことをこの教授はご存知ないのだろうか?おそらくレジ袋は専門ではないのだろうから知らなくとも不思議はないが、その手の調査は、例えば京都市が「家庭ごみ組成調査報告」でも行われ、ごみ中にレジ袋の占める割合が、1998年から2001年までの4年間の平均で7.3%(容積)も占めているそうだ。また、『「レジ袋」の環境経済政策』(舟木賢徳著)によると、廃棄物学会論文誌に掲載された福岡雅子氏の論文では、レジ袋がごみ袋として利用できる市での調査で、1枚のごみ袋の中に平均5.4枚のレジ袋が捨てられていて、そのうちの約3割のレジ袋はごみなども入れられることなくそのまま捨てられていたそうだ。
このような「量」の調査が何カ所かで行われているにも関わらず、7年も前の意識調査的なアンケート結果で、有料化による全体のごみ量うんぬんを推定するのはやめてほしい。レジ袋有料化により、ごみ量は確かに減るという根拠はいくらでもあるのだから。
とはいえ、レジ袋の害はごみ量が増えることだけではない。そのことを文春にはもっと突っ込んでほしかったが、誌面の都合もあるのだろうか。
文春がレジ袋に関しては多少歯切れが悪いのは残念だが、それでも武田氏の「エコバッグを使うより、使いまわせるレジ袋」を使用した方がよいとする説の根拠である「レジ袋は石油の不必要な成分を活用している」という点には異論を紹介し、武田氏説に疑問を呈している点は評価できる。
次回の文春では、ぜひ武田氏の紙リサイクル批判についてもとりあげてほしい。
また、2月号で「温暖化懐疑論」をとりあげた日経エコロジーも、温暖化懐疑論だけでなく、武田氏のリサイクル批判をもきちんと検証し警鐘を鳴らすべきだろう。
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